近年、財やサービスの納入を行うサプライヤーから当該財やサービスの納入を受け、サプライヤーに対し対価の支払債務を負うバイヤーとの事業性取引(B2B取引)において、請求書カード払い(BIPS:Business Invoice Payment Service)の利用が増加しています。 請求書カード払いとは、請求書カード払い事業者(以下、「BIPS事業者」)が、バイヤーからの委託を受け、サプライヤーが発行する請求書等に基づきサプライヤーへの支払を代行するとともに、キャッシュレス決済手段による支払をバイヤーから受けることをもって、バイヤーのサプライヤーに対する金銭債務の解消に係る手続きを実行するサービスをいいます。

一般社団法人キャッシュレス推進協議会(以下、「当協議会」)では、この請求書カード払いについて、その安全・安心な利用を実現するため、2023年度より「請求書カード払い取引ガイドライン」(以下、「ガイドライン」)の策定を、進めて参りました。 この度、ガイドラインに対する一定の議論形成がなされたことを踏まえ、ガイドラインを公表するとともに、今後、ガイドラインの運用を担う新たな組織として「請求書カード払い協会」を設立いたしましたので、これを公表いたします。
ガイドライン策定の背景
請求書カード払い(BIPS)は、キャッシュレス決済で支払いたいバイヤーとキャッシュレス決済での受付を導入していないサプライヤーをつなぐサービスとしてその利用が進んでおります。他方、本サービスの提供自体には明確な法規制は存在しない一方、その提供するサービス内容から、貸付けへの該当性や為替取引の該当性が考えられます。
立替サービスの貸付けへの該当性については、2024年度の金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」においても議論がなされ、個別のサービスの枠組みに照らして判断する必要があるとされつつも、金融庁において2025年4月2日に「立替サービスの貸金業該当性に関するQ&A」が公表される等、一定の判断材料が示されています。
また、請求書カード払いは、関係する事業者が多岐にわたり、その役割分担も複雑化していることから、業界全体として、調和の取れた決済環境の整備が求められておりました。 当協議会では、このような普及の状況と法規制に関する議論の状況も踏まえつつ、2023年度よりBIPS事業者、決済事業者、国際ブランド等、請求書カード払いに関連する様々な事業者との議論を通じ、ガイドラインの策定を通じた、安全・安心なキャッシュレス環境の整備に取り組んでまいりました。また、ガイドラインの策定過程においては、金融庁、経済産業省との意見交換も行い、既存の法規制に抵触することのないよう、慎重な検討を行っております。
ガイドラインの概要
ガイドラインでは、BIPS事業者、BIPS事業者に対してキャッシュレス決済サービスを導入している決済事業者(アクワイアラ)、バイヤーにキャッシュレス決済手段を提供している決済事業者(イシュア)を対象に、行為規制も含めた遵守いただきたい事項を記載しています。 正確な内容については、今回公表したガイドラインをご参照いただければと存じますが、その概要は以下のとおりです。
BIPS事業者向け
- 請求書カード払いを提供するBIPS事業者は、請求書カード払い協会への登録が必要です
- 顧客とするバイヤーは国内の法人もしくは個人事業主でなくてはなりません
- 支払先となるサプライヤーは国内の法人もしくは個人でなくてはなりません
- BIPS事業者は、バイヤー等の申込に関する真正性を確認することが必要です
- BIPS事業者は、取引の記録及びその保存義務が求められます
- BIPS事業者によるサプライヤーへの債務支払は、銀行振込に限定されます
- BIPS事業者は、反社会的勢力との関係を排除しなくてはなりません
- BIPS事業者は、バイヤーに対し、担保等の保証を求めてはなりません
- BIPS事業者は、バイヤー等に対する適切な情報提供を行わなくてはなりません
- BIPS事業者は、苦情処理態勢を構築しなくてはなりません
アクワイアラ向け
- アクワイアラは、請求書カード払い協会に登録のないBIPS事業者と、請求書カード払いを提供するための加盟店契約を締結してはなりません
- アクワイアラは、不当なBIPS事業者について、独自に加盟店契約の解除を検討しなくてはなりません
イシュア向け
- イシュアは、BIPS事業者が倒産等によりサプライヤーへの債務支払を履行できない状況になった場合に、カード会員であるバイヤーの求めに応じ、支払額を返金しなくてはなりません
請求書カード払い協会の概要
これまでガイドラインは当協議会にて検討を行い、公表いたしましたが、本日、その著作権等を新しく設立する請求書カード払い協会へ移譲いたします。今後、ガイドラインは請求書カード払い協会にて、その運用、改訂等について検討してまいります。また、請求書カード払いに関する事業者間の対話、課題解決に向けた検討についても積極的に進めてまいります。

活動内容
請求書カード払い協会では、設立時に以下の委員会を設置し、テーマに沿った議論を会員間で実施してまいります。
- 運営委員会(請求書カード払い協会の運営方針の検討、外部機関との対話)
- ガイドライン委員会(ガイドライン及び細則の作成・改訂)
- 標準化委員会(請求書カード払いの提供において必要な技術的事項に関する標準化の検討)
- 不正対策委員会(請求書カード払いの不正、不当な利用に関する会員間での情報交換)
- 審査委員会(ガイドライン違反をおこしたBIPS事業者の処分に対する検討)
初期参画事業者(五十音順・25事業者)
- 株式会社UPSIDER
- アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc.
- SBペイメントサービス株式会社
- 銀聯国際日本支社
- 株式会社ジェーシービー
- 株式会社デジタルガレージ
- 日本チェリー株式会社
- FINUX株式会社
- マスターカード・ジャパン株式会社
- 三井住友カード株式会社
- 三菱UFJニコス株式会社
- ユーシーカード株式会社
- 株式会社リクルート
- 株式会社アプラス
- 株式会社インフキュリオン
- 株式会社オリエントコーポレーション
- 株式会社クレディセゾン
- 株式会社ジャックス
- トヨタファイナンス株式会社
- ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社
- PayPayカード株式会社
- マネーフォワードケッサイ株式会社
- 三井住友トラストクラブ株式会社
- 弥生株式会社
- ライフカード株式会社
設立時役員(氏名五十音順・8名)
- 小川 康秀(弥生株式会社 執行役員 Innovation X BU長)
- 高畠 健一(株式会社オリエントコーポレーション 常務執行役員)
- 武⽥ 修⼀(OLTA株式会社 取締役副社⻑兼CSO)
- 戸塚 正敏(三菱UFJニコス株式会社 執行役員 営業第2本部副本部長)
- 永山 勇一郎(三井住友カード株式会社 専務執行役員)
- 原田 潔貴(株式会社デジタルガレージ BtoB決済事業開発部長/株式会社DGフィナンシャルテクノロジー 執行役員 グループ戦略室長)
- 森田 航平(株式会社インフキュリオン 執行役員CSO Winvoice部長)
- 福田 好郎(請求書カード払い協会 事務局長)
事務局
請求書カード払い協会の事務については、キャッシュレス推進協議会が担当いたします。
今後に向けて
ガイドラインは、本日公表したことを受け、2026年6月26日より実際に本格運用(施行)されます。今後、本ガイドラインはあくまで民間事業者の自主的な取組であることを踏まえつつ、請求書カード払い協会において、本格運用に向け、ガイドラインの運用に向け必要な細則の検討を行いってまいります。 請求書カード払い協会では、関係する事業者の皆様のご参加をお待ちしております。ご参画にご関心のある方は、協会事務局(info@bipsa.org)までご連絡ください。
